北上済生会病院

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診療科・部門

血管外科

2020年4月、血管外科にシャント(※)と下肢静脈瘤の専門外来を開設いたしました。

シャント外来

透析医療の進歩とともに、透析患者様の予後も改善しています。シャントは透析患者様の命綱です。しかしながら、シャントの再造設には限りがあります。定期健診(シャントメンテナンス)により、大切なシャントをできるだけ長期にかつ快適に維持できるようにお手伝いをさせていただきたいと考えております。 当科ではシャントに関しての総合診療(①診断 ②血管内治療 ③手術 ④カフ型カテーテル留置)を行っております。    

 

①診断

シャントメンテナンスにより、患者様に安心して透析医療を継続していただきたいと思っております。透析に支障をきたすシャントトラブル、ましてや閉塞にいたっては、何とか未然に回避したいものです。しかしながら、過剰な治療も患者様の負担になります。超音波検査(症例により造影検査も併用)により、シャントの状態を客観的に把握し、治療履歴も考慮したうえで、適切な治療介入を検討いたします。血流低下、拍動、瘤化、静脈圧上昇、シャント肢の浮腫・腫脹等はシャントトラブルのサインです。また、無症状でもトラブルの芽が潜んでいることもあります。健診だけでも結構ですので、お気軽にご相談ください。  

 

②血管内治療

経皮的血管形成術(PTA)は、細い管の先端に風船(バルーン)のついたカテーテルを血管の中に挿入し、バルーンを膨らませ狭窄部を拡張する方法です。治療時間は平均1時間程度です。閉塞した場合でも、早期であれば、PTAで再開通できる可能性が高いので、ご相談ください。また、当院では薬剤コーティングバルーン、ステントグラフトなどの先進デバイスの使用が可能で、短期間に再狭窄を繰り返す症例には、患者様の負担を軽減するためにも積極的に使用しています。拡張時疼痛の強い患者様には、鎮静下での治療もおこなっております。適応について検討する必要がございますので、受診時にご相談ください(通常治療終了時には覚醒しますが、完全覚醒まで時間を要することもあります。車の運転等はできません)。基本的に日帰りで行っておりますが、入院での治療も可能です。  

 

③手術

内シャント造設術(自己血管・静脈転移・人工血管等)、動脈表在化などをおこなっています。可能な限り患者様ご自身の静脈をいかしたシャント造設を心がけております。また、そのほかのシャントトラブル(シャント血管瘤、過剰血流シャント等)に対する手術も行っております。

 

シャントのかかりつけ医・専門医として、患者様、透析施設の医療従事者様のお役に立ちたいと考えております。

 

(※)血液透析で脱血・返血に使用する内シャント、カテーテル、表在化動脈などを総称してバスキュラーアクセス(VA)と表現するのが適切ですが、VAの多くがシャントであることもあり、シャントで統一させていただいております。  

 

④カフ型カテーテル

以前は長期留置型カテーテルともいわれていたのですが、カフ型カテーテルという呼称が一般的になっています。その名の通り、フェルトのようなカフがついていて、組織としっかり密着し、また医療工学の進歩もあり、長期留置が可能となっています。当院では留置、抜去とも1泊入院でおこなっています。カフ型カテーテルの適応ですが、①ブリッジユース、②パーマネントユースがあります。①ブリッジユースですが、シャントが使用になるまでの一時的な留置で、シャント使用可能後に抜去します。以前は、シャント使用までの長期入院が必要でしたが、カフ型カテーテルを留置することで、入院期間を短縮し、全身状態を改善した上で、シャントを造設することができます。②パーマネントユースですが、シャント造設が困難、また全身状態が不良な患者様を対象とした留置になります。入浴制限などはありますが、シャワー浴は可能であり、感染、閉塞のリスクはあるのですが、通常1年以上の留置が可能となっています。ただ、長期開存には、患者様またご家族、そして透析スタッフの管理が重要です。当院の患者様、医療従事者マニュアルを公開していますので、ご参考になさってください。

 → 【患者様用】カフ型カテーテル使用マニュアル
 → 【医療従事者用】カフ型カテーテル使用マニュアル

下肢静脈瘤外来

下肢静脈瘤は静脈弁不全により静脈が逆流し、下肢(太もも、ふくらはぎ、すねなど)の血管が瘤(こぶ)のように膨れたり、浮き出て見える病気です。静脈鬱滞による、足が疲れやすい、むくむ、だるい、足がつるなどが典型的な症状です。命にかかわることはほとんどない良性疾患ですが、自然に治癒することはなく、放置すると静脈瘤の増大、色素沈着、潰瘍と進行していきます。治療対象となるのは主に大伏在静脈、小伏在静脈が逆流する伏在型の静脈瘤になります。治療には、①圧迫療法 ②手術 ③血管内治療 ④硬化療法があります。超音波検査により病態を評価し、患者様のご要望もふまえて、適正な治療方法を検討いたします。

 

 下肢静脈瘤のタイプ

 

①圧迫療法

弾性ストッキングという通常より圧の高い医療用ストッキングを着用することにより、静脈逆流を防止し静脈鬱滞による症状を軽減します。根本的に治すための治療ではなく、あくまでも悪化を遅らせ、症状を軽くするための対処療法です。したがって、静脈瘤が消失するわけではありません。日中立位でいることが多い場合は、できるかぎり着用することが大切です。

 

②手術

逆流している静脈を抜去(ストリッピング)、または結紮します。当科では、血管内治療が難しい症例におこなっております。

 

③血管内治療

静脈内にカテーテルを挿入し、ラジオ波により静脈を焼灼する治療(血管内焼灼術)と、シアノアクリレートという接着剤により静脈を塞栓する治療(血管内塞栓術)をおこなっております。侵襲も傷痕も手術に比べ小さく、治療時間も1時間程度で、日帰り治療を基本としています。両治療成績には差がないとされていますが、長所・短所がありますので、ご説明をさせていただいた上で、治療法を検討いたします。治療後日常生活に支障はありませんが、安全上治療当日の運転はできません。1泊入院での治療も可能です。

 

 血管内焼灼術+静脈瘤切除術

④硬化療法

伏在静脈瘤を治療すると、末梢の静脈瘤はめだたなくなることが多いのですが、遺残し目立つ静脈瘤に対しては、硬化剤を空気と混合しきめの細かい泡をつくり、静脈内に注入するフォーム硬化療法を行っています。治療時間は30分程度で日帰りでできます。多くの場合、炎症で発赤ができ一時的に硬くなり、色素沈着等をおこします。次第に吸収されて目立たなくなりますが、半年から1年程度かかります。また、複数回治療が必要になる場合もあります。喘息などの既往がある場合は、フォーム硬化療法をおこなえません。その場合、数ミリの針孔から静脈を引き出して切除する静脈瘤切除術をすることもできます(すべての静脈瘤は除去できません。針孔の傷痕については個人差がありますのでご了承ください)。両治療法とも、治療後数週間程度弾性ストッキングを着用する必要があります。

 

治療実績

バスキュラーアクセス

  2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
PTA 262 530 525 491 475
 閉塞 24 41 38 37 51
手術  18 27 30 75 60
 自己血管 15 22 25 68 47
 人工血管 3 5 5 7 13
カフ型カテーテル留置 7 13 25 27 32

下肢静脈瘤

   2021年 2022年 2023年 2024年
血管内治療  31 55 61  90
手術  4 9 0
硬化療法 0 0 0 14

 

血管外科外来

診療担当医師一覧はこちら

 

シャント外来
 月曜日・木曜日 午前8時30分~11時00分(要予約) 緊急の場合には随時対応いたしますので、直接ご相談ください。

下肢静脈瘤外来
 火曜日・水曜日 午前8時30分~10時00分(要予約)

北上済生会病院

血管外科長   山下 洋


医師・スタッフ紹介

職名 血管外科科長
兼臨床工学科科長
氏名

ヤマシタ ヒロシ

山下 洋

卒業年度

1997年度
所属学会 日本外科学会
日本血管外科学会
日本脈管学会
日本透析アクセス医学会
透析バスキュラーアクセスインターベンション治療(VAIVT)医学会


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