腰部脊柱管狭窄症
加齢や長年の負担によって背骨(脊椎)の中の神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、神経が圧迫されることで症状が出る病気です。
【主な症状】
- 歩いていると脚がしびれたり、痛くなり、休むと楽になる(間欠性跛行)
- 腰や脚の痛み、しびれ、脱力感
- 長時間立っていられない
- 重症になると排尿や排便の障害が出ることもあります
【診断】
問診・身体診察に加え、MRIやCTなどの画像検査を行い、脊柱管の狭窄や神経の圧迫の程度を確認します。
【治療】
- 保存的治療:内服薬(消炎鎮痛薬、神経障害性疼痛治療薬など)、選択的神経根ブロック注射、リハビリテーション(運動療法)など
- 手術治療:保存的治療で効果が不十分な場合や、症状が進行する場合には、神経の圧迫を取り除くための手術を行います。変形や狭窄の程度によって以下の手術を行います。
- 除圧術(椎弓切除術):狭くなった脊柱管の骨や靭帯を削って神経の圧迫を除去します。適応となる場合には、内視鏡での手術を行います。小さな創で体への負担が少ない術式で、早期の回復が期待されます。
- 固定術:背骨が不安定な場合には、金属のスクリューやロッドで安定させる手術を併用することもあります。
腰椎椎間板ヘルニアについて
腰椎椎間板ヘルニアは、腰の背骨(腰椎)の間にある「椎間板」が加齢やスポーツ、重労働、長時間の座位などにより負担がかかり、中の髄核(やわらかい組織)が外に飛び出して神経を圧迫することで様々な症状を引き起こす病気です。20〜50代の比較的若い世代に多いです。
【主な症状】
- 腰の痛み(腰痛)
- お尻や脚へのしびれ・痛み(坐骨神経痛)
- 長時間座る、立つ、歩くことがつらい
- 足の感覚が鈍くなる、力が入りにくい
- 重症では排尿・排便の異常が生じることもあります。
【診断】
問診・身体所見に加え、X線検査やMRIで椎間板の状態や神経の圧迫を評価します。
【治療】
- 保存的治療:内服薬(消炎鎮痛薬、神経障害性疼痛治療薬など)、選択的神経根ブロック注射、リハビリテーション(運動療法)など、多くの場合、保存的治療で症状は軽快します。椎間板ヘルニアの種類によってはヘルニアを縮小させる薬剤を椎間板内に注射する治療(椎間板酵素注入療法)が行われることもあります。
- 手術治療:保存的治療で効果が不十分な場合や、症状が進行する場合には、神経の圧迫を取り除くための手術を行います。
頚椎症性脊髄症について
頚椎症性脊髄症は、加齢に伴って椎間板の変性、骨棘(骨のとげ)の形成、靭帯の肥厚などが重なり、脊髄や神経根の通り道が狭くなり、手足のしびれや動きにくさを生じる病気です。進行すると日常生活に支障をきたすこともあり、早期の診断と適切な治療が重要です。
【主な症状】
- 手のしびれや細かい動作のしづらさ(ボタンがかけにくい、箸が使いにくい、書字や物をつまむ動作の困難など)
- 足のもつれ、歩行時のふらつき
- 首や肩の痛み・こり
- 排尿障害(進行例)
【診断】
問診・身体所見に加え、X線検査やMRIで神経の圧迫の場所と程度を評価します。
【治療】
症状の程度や生活への影響に応じて、保存的治療と手術治療があります。
- 保存的治療:内服薬(消炎鎮痛薬、神経障害性疼痛治療薬など)、リハビリテーション(運動療法)など。
- 手術治療:保存的治療で効果が不十分な場合や、症状が進行する場合には、神経の圧迫を取り除くための手術を行います。
手根管症候群について
手のひらの付け根にある「手根管」というトンネル状の構造の中で、周囲の腱や靭帯の腫れ、加齢変化、ホルモンバランスの変化(妊娠・更年期など)で正中神経が圧迫されることで、手のしびれや痛みが出現する病気です。特に女性や中高年に多くみられます。糖尿病や透析、手をよく使う仕事・作業とも関連があります。
【主な症状】
- 親指、人差し指、中指、薬指の親指側半分のしびれや違和感。はじめは部分的にしびれが出ることが多いです。
- 明け方や夜間に症状が悪化しやすい
- 指先の細かい作業がしづらい(ボタンがかけにくい、箸が使いにくいなど)
- 物をよく落とす
- 親指の付け根の筋肉(母指球筋)のやせ(筋萎縮)
【診断】
問診・身体所見に加え、X線検査、必要に応じてエコーやMRIで神経の状態の確認、神経の伝わりやすさを測定する神経伝導検査を行います。
【治療】
- 保存的治療(軽度〜中等度の場合)
手首の固定(夜間用の装具など)、内服薬(消炎鎮痛薬、ビタミンB12など)、ステロイド手根管内注射
- 手術治療
手根管開放術を行い、手根管の靭帯(横手根靱帯)を切開して神経の圧迫を解除します。
1泊2日の手術となることが多いです。
圧迫骨折について
圧迫骨折は、主に背骨(脊椎)の骨が押しつぶされるようにして潰れてしまう骨折です。高齢者の方に多く、骨粗しょう症が主な原因です。特に転倒や重いものを持ち上げる動作などで生じますが、くしゃみや少し前にかがむといった軽い動作でも起こることがあります。
【主な症状】
- 背中や腰の急な痛み
- 寝返りや立ち上がりの動作で痛みが強くなる
- 徐々に背中が曲がってくる(円背)
- 複数箇所の骨折で身長が縮む
【診断】
X線検査やCT検査が用いられますが、MRI検査が圧迫骨折の評価において非常に有用です。新鮮骨折か陳旧性かの判別、圧迫の進行程度の予測、安定性の評価、神経圧迫の有無、他の疾患(腫瘍や感染)との鑑別などのため必要です。
骨密度検査:必要によって骨粗鬆症の治療を開始します。
【治療】
- 保存的治療(軽度〜中等度)
安静・コルセットによる固定、消炎鎮痛薬、骨粗鬆症治療薬
リハビリテーション(寝たきりを防ぐための早期離床・筋力訓練)
※多くの場合、3か月程度で骨が固まって痛みが軽快します。
- 手術治療
痛みが強く日常生活に支障がある場合、今後変形が強くなることが危惧される場合
経皮的椎体形成術(骨折した椎体に骨セメントを注入して安定させ、痛みの軽減と変形の予防を図ります)
後方固定術:不安定性が強い場合、変形がすでに強い場合に行います。